my very precious days ーHIROSUE TOMOKO

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ベツレヘム 幻の聖夜

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 聖しこの夜、星は光り、救いの御子は御母の胸に眠りたもう、いとやすく‥。
ベツレヘム、という街の名前は、おそらく、私が初めて覚えた外国の街の名前だったかもしれません。
 人口登録のため、ナザレからベツレヘムへと何日もかけて旅を続けた身重のマリアとヨセフ。たどり着いたベツレヘムで一夜の宿を求めたもののどこもいっぱいで、あてがわれたのは粗末な馬小屋。そこでマリアは男の子を生みます。夜空にはひときわ大きな星が現れ、その星の明かりを頼りに羊飼いたちや、東方から3人の博士が次々とやって来て、飼い葉桶に寝かされた小さな幼子を見つけました。喜び歌う天使たち。人々は幸せな気持ちになって、心から神を賛美します。
 世界中のカトリック系の幼稚園や学校で、このクリスマスストーリーを描いた聖劇が毎年、どれほど演じられていることでしょう。ベツレヘムという名前はもちろん、3人の博士が持って来たもつ薬や乳香といった言葉は幼いころから、私のクリスマスに対するイメージをかき立ててきました。
 その、本物のベツレヘムでクリスマスイブを過ごすことができるのは私にとって、夢のようなことだったのですが‥。
  
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 私の日頃の行いの悪さを嘆いたのでしょうか、神様はこの旅の最後のクライマックスに、私にきれいな夢を見させてはくれませんでした。イブの日、エルサレムは夕方から突如大雨となり、予約もしていたダビデの塔の光と音のショーも中止に。そしてベツレへムへと向かうに連れて雨脚はさらに強まり、ほとんど横なぐりの雨に。イスラエルでこんなに雨が降り続くことはめったにないのですが、ちょうど私が生まれて初めてベツレヘムに出掛けた2011年のイブの夜がそんな悪天候と重なってしまったのです。
 イブのミサはキリストが生まれたところとされる生誕教会(上の写真にちらりと映っている教会)の中で行われるのですが、それは招待状がないと入れないということで、もともと外から見る予定でした。すぐ横の広場には各国からやって来る聖歌隊のステージもあって、入れ替わり立ち替わりきれいな歌声が広場に響き渡り、それはそれなりにクリスマス情緒にあふれているということだったのですが‥。大雨で私たちが行った時には、聖歌隊のステージは早々に取り壊されるところ。広場にはアラブ系の若者がいかにも暇つぶしに来ているかのようにたむろしていて、パレスチナの兵士も警備に力が入っている様子でもなく、全体に倦怠感のようなものが漂っていて、聖なる夜を喜ぶ雰囲気は私が見た限りありませんでした。世界中がクリスマスイブを心から祝っているこの時に、本家本元のベツレヘムで、こんなムードも何もないイブがたんたんと過ぎているなんて‥。多分にお天気のせいもあるのでしょうが、「中のミサに入るとまた違うんだろうけど、いつもたいていこんなもの。これが聖地の現実」とガイドさん。
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 報道ではこの夜、世界中から何万人もベツレヘムのミサに訪れたとか、ミサでは中東和平を願うメッセージが厳かに発信されたということですが、そんなにもたくさんの人が教会に詰めかけている様子は全く感じられず。教会の中の様子は外の電光掲示板で地元のテレビ局によって生中継されているようでしたが、見ている人もまばらでした。時々、たぶん各国の要人を乗せているだろう黒塗りの車が現れて、教会へ向かっていましたが、その都度、現場に緊張感が走るということもなく、パレスチナの兵士たちも、この行事に慣れ切っているような感じを受けました。残念ですが、聖地でのクリスマスイブは政治的要素の強いお決まりのイベントとなっているのが現実のようです。
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 それでも2011年のクリスマスイブを聖地ベツレヘムで迎えることができたことは大きなお恵み。1年前の私には想像もつかなかったことが現実になっていることに、なんともいえない不思議な思いにとらわれていました。
 広場を少し離れて、ガイドさんが私を連れていってくれたのは、とある空き地(というかゴミ捨て場?)。なぜかというと、数年前、なんでもキリストやムハンマドとも話ができるとかいう変なおじさんがやって来たとき、「キリストが生まれた場所は、生誕教会の中ではなく、ここだ」と言ったそうなのです。家々が立ち並ぶ路地裏でぽっかり空き地になった場所。その人は「聖なる人が生まれた地には何人も家は建てられない。だからそのまま残っている」と自信を持って言っていたそうです。
そのおじさんの言うことに、ガイドさんはなぜなのか不思議と信憑性を感じたようで、「だから、もしかしたら本当はここなのかも。一応、見とき」と。少しの間、広場のざわめきを離れて誰もいない空き地を2人してしばし、眺めました。
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 そうこうしている間にも雨脚はどんどん強くなり、もう離れるしかない状況に。広場のクリスマスツリーの電飾も今にもショートしそうで、ずぶぬれになりながら車に戻るしかありませんでした。
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 雨の水滴と、夜でどうしてもカメラがぶれてしまうので写真もほとんど撮れずじまいで、何もかも思ってもみない展開に。皆さんに、聖地ベツレヘムでの感動的なクリスマスイブの様子を報告する事ができず、もうしわけない限りです‥。
 ユダヤ教徒がほとんどのイスラエルでは街中にハヌカ祭のハヌキアはあちらこちらにあっても、クリスマスツリーの一つも見られないし、ベツレヘムはさすがにクリスマスツリーはあっても、パレスチナの暫定自治区だけあって、イスラム教徒が多く、クリスマスを祝う気持ちはほとんどの人の中にないのが現実。HOLLY LAND イスラエルがもしかしたら、世界でいちばんクリスマスと縁遠いのかも。でも、こういうことも体験してみないと分からないこと。この、いろいろなことがあり過ぎた2011年に2度もイスラエルを訪問し、無事にクリスマスイブをベツレヘムで過ごせたことに、今は心から感謝しています。人気ブログランキングへ
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by hirotomo0301 | 2011-12-26 19:43

21年間続けた一地方紙の記者の仕事から足を洗い、2カ月半の世界13カ国周遊1人旅から帰ってはや半年。過去の日々を振り返りつつ、次の一歩を模索していきます。


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