my very precious days ーHIROSUE TOMOKO

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天空の郷の人生

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 遠く連なる山々、足下には棚田‥。梅雨空の下、どこもかしこも緑の、のどかで美しい風景が眼下に広がります。吉野川の源流域、土佐の山間にある本山町・高角地区。“天空の郷”と呼ばれるその場所は、きっと遥か昔から変わっていないだろう、そのままの姿で、人々を優しく迎えてくれます。
 ここ高角は、昨年秋、県立坂本龍馬記念館の20周年記念事業で、私たち母娘も一緒にアメリカに行ったメンバーの1人、県立嶺北高校3年生の大石すみれちゃんが生まれ育ったところ。そして、彼女の大好きなお父さんで、私の大学時代の友人でもある大石直哉君が先祖代々受け継ぎ、大切に守ってきた、高知県嶺北地方の宝物のような場所です。
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 大石君のご家族は、この、大きな大きなクヌギの木の下にある大きなお家で暮らして来ました。大学を卒業してから20年余り。大石君は大学の同級生だった最愛の奥さんと結婚し、二人の可愛い娘さんに恵まれ、そして、ご両親もともに一家で椎茸の原木栽培に精を出す傍ら、町会議員として町の活性化に情熱を傾けてきました。私とは、昨年、アメリカ旅行ですみれちゃんと一緒になったのをきっかけに再会したのですが、20年前と変わらない、生き生きと元気いっぱいの笑顔に、本当にいい人生を過ごしていることが伝わってきました。そして、すみれちゃんのことが、心配で心配でたまらず、二人の娘さんを本当に大切に思っていることが‥‥。
 それなのに。それなのに、今年5月のゴールデンウィークの最中、私と同じ、44歳で、あまりにも突然に、なんの兆候もなく、あっけなくその生涯は終わりを告げました。心筋梗塞でした。信じられない出来事は人生に多々あるけれど、それでもあんまりすぎる‥。ご家族の胸中を思うと、こうして文章にして書くことも辛すぎます。嘘やろ?と今でも言いたい。それでも、49日も過ぎた今日、あらためてお家を訪ね、大石君が今もそこにいるようなお部屋で、大学時代の思い出やすみれちゃんたちのこれからのことをいっぱい話し、大石君が娘たち同様、手塩にかけて大切に育ててきた「大石きのこ園」を見せてもらって、大石君のことをいま少しでも書いておこうと思いました。奥さんの美香ちゃんも許可してくれたので、このブログを読んでくださっているみなさんに、大石きのこ園と、大石君のことについて心にとめていてもらいたいと願って書きます。
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 上の写真は、この3月に取材を受けたという「TOSA国保だより」。「しいたけづくりが里山を守る『天空の郷』本山町のしいたけ」と題して、ご両親と大石君夫妻のとってもいい笑顔の大きい写真がフロントを飾り、山中での大石君のインタビューや、しいたけの写真もいっぱい載っていて3㌻にもわたって特集されています。出来上がった雑誌は、大石君が亡くなった後に届いたのだそうです。それも辛過ぎるけど、でも、このインタビューを受けている大石君の写真を見ていると、今にも声が聞こえてきそう‥。どちらかというと朴訥な喋り方の、照れ屋でシャイなところのある、それでいてとってもたくましい、まさに山の男でした。
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 何千本も山積みにされたしいたけの“榾木(ほだぎ)”。山に自生していたり、自分で植林したりしているナラやクヌギの木を1㍍ほどに切ったのが原木で、これに一つ一つ手で菌を植え込んでいくのがしいたけの原木栽培なのです。これを完全無農薬で行い、毎日毎日休むことなく、一つ一つの手塩にかけて育てたしいたけを摘み取り、生協などに出荷していた大石君。大黒柱を失ったハウスは遮光シートが掛けられているせいもありますが、寂しく見えました。きのこ園は、今、菌を植え込み済みの原木はなんとか出荷するものの、その後は閉鎖せざるを得ない状況にあるようです。私ごときの第3者が軽く言えることではもちろんないですが、大石君がここまでにしたきのこ園を続けていく方法はないものか、山里をこれ以上疲弊させないためになんとかできないのか‥胸が痛みます。

       ◇         ◇         ◇
  
  でもでも、希望はもちろんいっぱいあります。過度なプレッシャーを掛けてはいけないけれど、まさに、最愛のお父さんの血をそのままに受け継ぎ、「嶺北の龍馬になりたい」という大志を持って、昨年のアメリカ行きに応募し、県内の高校生の代表として堂々と米国の高校生たちとディスカッションしたすみれちゃん。「過疎化の進む古里、嶺北をもっともっと元気にしたい、そのために、勇気をもって外の世界に一歩を踏み出し、そこから活性化のヒントをいっぱい持って帰りたい」。その勇姿が、オバマ大統領の出身校であるハワイ・プナホウスクールに認められ、この夏休み、龍馬財団の最初のスカラシップ生として、ハワイに短期留学する事が決まったのです。日本の、地方の、しかも嶺北のような田舎(いい意味でです)の高校生の受け入れはきわめて異例のこと。生前、大石君は「本当にうれしい。自分の娘ながらすごい」と嬉しそうに話し、「すみれのことをほんとによろしく頼む」と何度も何度も言っていました。
 その留学を目前にしたお父さんの死は、すみれちゃんにどれだけの‥(これ以上は書くのも辛くて書けません)。それでもしっかりと前を向いて、1人、ハワイへと旅だって行きました。龍馬財団の小さなバッジをしっかりと胸に付けて。
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 一カ月ほどの短期留学ですが、きっと大きく成長して帰ってくることでしょう。すみれちゃん、お父さんはどこへ行ってもずっと一緒やし、もちろん龍馬財団のみんなもいつでも応援しゆうきね。あんまりプレッシャーに感じんでえいき、自分らしく、楽しんできてね。心からそう思います。
 
         ◇        ◇        ◇
 最後に、きょう、お土産にもらった、大石きのこ園の干ししいたけ。いちばん美味しい方法で料理してその味をずっと忘れないでいたいです。
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 そして。美香ちゃんが「直哉君がそこにいるから」という大石きのこ園のHPのアドレスを。http://ooishikinokoen.com/です。ぜひ、のぞいて、大石君の椎茸栽培への、天空の郷への思いを直に見て聞いてください。人気ブログランキングへ
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by hirotomo0301 | 2012-07-16 02:21

21年間続けた一地方紙の記者の仕事から足を洗い、2カ月半の世界13カ国周遊1人旅から帰ってはや半年。過去の日々を振り返りつつ、次の一歩を模索していきます。


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